理想と現実のあいだで、DPは何を捨て、何を守るのか

CM撮影の現場で、すべての条件がきれいに揃うことは、ほとんどありません。
予算や時間の制約、天候、ロケ地の条件。
演出プランがどれほど理想的でも、現場は必ずどこかで「現実」とぶつかります。
そんなとき僕が考えているのは、「どうすれば全部できるか」ではありません。
何を手放し、何を守るかです。
制約は、想定外ではない
絵コンテは完成形というより、優先順位が隠された地図のようなものです。
僕は、現場で制約が出ることを前提にコンテを読んでいます。
このカットが成立しなかったらどうなるか。
どこが崩れると、CMが成立しなくなってしまうのか。
事前の段階から、そうした判断軸を頭の中で組み立てています。
まず手放すもの
条件が厳しくなったとき、僕が最初に諦めるのは、意外と「見栄えのいい要素」です。
気持ちのいいカメラワーク
カメラが滑らかに動くかどうかは、演出意図に直結しない限り、優先度は高くありません。
必要以上なライティング
整えるのは、必要なところまで。
それ以上の凝ったライティングは意味がなければ、真っ先に削ります。
「撮れたらうれしい」カット
現場ではたくさんのスタッフがいて、アイデアも増えますが、ただ、それが伝えたいこととズレているなら、迷う理由はありません。
何があっても守るもの
一方で、条件がどれだけ変わっても、僕が絶対に崩さないものがあります。
それは細かい画づくりではなく、CMとしての“軸”です。
世界観に影響する要素は絶対に変えない。
CM全体のトーン
ポップなのかクールなのか
ポジティブなのかシリアスなのか
重厚感があるのか軽やかなのか
ここがズレると、まったく別のCMになってしまいます。
だからトーンだけは、最後まで必ず守ります。
主役の見え方
商品でも、人物でも、その主役を、「どういう存在として見せたいのか」。
頼もしく見せたいのか。
身近に感じさせたいのか。
少し憧れの距離に置きたいのか。
この見え方だけは、どんな判断をするときも基準になります。
観る側の感情の流れ
CMは、一枚のきれいな画を見るものではありません。
観ているあいだに、気持ちがどう動くかが大事です。
最初に何を感じ、最後にどんな印象を持つのか。
僕が守っているのは、画そのものよりも体験です。
判断は、妥協ではない
現場での変更は、「仕方のない対応」と見られることがあります。
ただ、僕の中ではそうではありません。
同じ意図にたどり着くための、別の行き方を選んでいるだけです。
手段は変わっても、ゴールは変わっていません。
この感覚が共有されていると、ディレクターとDPのやり取りはとてもスムーズになります。
企画・演出側に伝えたいこと
DPが一番判断しづらいのは、「全部大事」という状態です。
逆に、
・このCMで一番伝えたいこと
・絶対に崩したくない印象
これが共有されていれば、DPはかなり大胆な判断ができるようになります。
まとめ:DPの仕事は、画ではなく体験を守ること。
CM撮影の現場では、理想と現実が常にぶつかります。
そのなかで僕がやっているのは、すべてを追いかけることではなく、守るべき軸を見極めることです。
・手放すものは、意味が薄く、演出の意図とズレる要素
・守るものは、CMとしての軸、世界観、主役の見え方、観る側の体験
引き算は妥協ではありません。
むしろ、意図をブレさせずにゴールにたどり着くための別の道です。
画面に直接映らないけれど、CMを観たときに感じる体験の質は、この判断の積み重ねで決まっているのだと思っています。
MEAL RECORDSが選ばれる理由
演出意図を最優先にする現場対応
制約や変更があっても、CMの軸と体験を守る判断力があります。
無駄を削ぎ落とすプランニング
必要な画を見極め、意味の薄い要素を手放すことで、映像の質を最大化します。
世界観と主役をブレさせない演出力
CM全体のトーン、主役の見え方、観る側の体験をブラさずに、一貫した表現を届けます。
企画〜現場までのスムーズな連携
事前の意図共有で、ディレクターやプランナーとの判断のズレを最小化します。
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