※この記事は、MEAL RECORDSのDPとしての考え方を整理したピラー記事です。
現場での判断や思考を、ページ下のクラスター記事でより具体的に掘り下げています。
DP(シネマトグラファー)の仕事は、「きれいな画を撮ること」だと思われがちです。
けれど、実際の現場で僕が考えていることは、カメラや照明の話よりも、もっと手前にあります。
演出プランを受け取った瞬間から、僕の頭の中では、すでに“画づくり以前の思考”が始まっています。
この記事では、演出プランをどう読み取り、どんな順番で思考を組み立て、どこを判断の軸にして“画”へと落とし込んでいるのか。DPという立場から、その思考のプロセスをまとめてみたいと思います。
コンテは“答え”ではない
僕はコンテを完成形だとは考えていません。
むしろ、「なぜこのカットが必要なのか」を考えるための材料だと思っています。
・なぜこのサイズなのか
・なぜこの順番なのか
・なぜここでこの画なのか
絵が描かれていても、その意図が読み取れないコンテは、画に変換しづらい。
一方で、ラフでも意図が明確なコンテは、判断がとても早くなります。
演出意図を“感情の流れ”として読む
演出プランは、画の設計図というより、感情の設計図だと考えています。
冒頭でどんな気持ちにさせたいのか。
中盤で何に目を向けてほしいのか。
ラストでどんな余韻を残したいのか。
光や露出、カメラとの距離感は、その感情の流れをなぞるための手段にすぎません。
「暗いから不安」ではなく、「不安にしたいから、光を削る」。
この順番を大切にしています。
光は、明るさではなく“意図”の話
光は単なる雰囲気づくりではありません。
安心させたいのか、緊張感を残したいのか。
日常として見せたいのか、演出された世界なのか。
そうした演出の方向性そのものが、コンテやプランから読み取れるかどうかが重要だと思っています。
光の意図が共有されている現場では、判断は驚くほどスムーズになります。
理想と現実のあいだで守っているもの
現場では、すべてが理想通りに進むことはありません。
だから僕は、「全部やる」ことよりも、何を手放し、何を守るかを考えています。
真っ先に削るのは、見栄えだけの要素。
何があっても守るのは、CM全体のトーンと、主役の見え方、そして観る側の感情の流れです。
DPの判断は妥協ではなく、同じゴールに向かうための別の選択肢だと思っています。
まとめ:「どう撮るか」より前に、 「どう感じてほしいか」
その軸が共有できていれば、画は無理なく、ひとつの方向に揃っていく。
僕はそう信じて、現場に立っています。
MEAL RECORDSが大切にしていること
MEAL RECORDSでは、画づくりの前に、「このCMで、どう感じてほしいのか」という会話を大切にしています。
完成形を急ぐより、演出意図をぶらさないこと。
その積み重ねが、映像の説得力につながると考えています。
関連記事|DPの思考を、もう少し具体的に
この記事では、「演出プランを受け取った時、DPは何を考えているのか」という全体の思考の流れをまとめてきました。もし、
・現場での判断は、実際どう行われているのか
・コンテや光、制約が出た時に、何を基準に選び直しているのか
もう少し具体的に知りたい場合は、以下の記事もあわせて読んでみてください。
演出プランを受け取った瞬間、DPが「画づくり以前」に考えていること。
意図・感情・軸をどう読み取り、画に落とす前段階で何を整理しているのかを詳しく書いています。